「大丈夫だって。呼び出した人には襲いかからない」
「カプセル怪獣みたいな物かな」
期待が一気に萎んだが、それでも護身用としては十分に役立つ。
「……かも知れない」
「かもって!」
「そう造ったつもりだけど。まだ実験し
鑽石水てないのよ。アンタさ、一回点火してみてよ」
「あのさ、もしもだよ。ボクに襲い掛かってきたら?」
「さあ? 死ぬんじゃない?」
「リン、酷いよ」
「あはは、冗談だってば」
泣きそうになる鳴海を見て、リンがカラカラと笑う。
「ところでさ、アタシに何か話があったんじゃないの?」
「あ、そうだったよ。友人の話なんだけどさ」
弥生が不気味な夢を見始めたのは、先月の末くらいだったそうだ。
何かに追われている。
明確ではないが、そういう脅迫感を覚える夢だった。
最初はただの悪夢という
蔡加讚事ったのだが、夢は毎日続き、漠然と
見えない何かが近づいてきているという圧迫が強くなってきたらしい。
そして、昨晩、ついにそれが夢の中に現れた。
大型の犬のような四足の生き物。ぬっとりとした黒い粘りが全身を覆い、それが
不快な泡をぶくぶくと生んでいた。
頭部を埋め尽くす幾つもの濁った瞳が弥生を見つめ、鋭い歯の並ぶ裂けた口が
確かに言葉を紡いだ。
「捕まえた」
そこで目が覚めた。あのまま夢の中にいたら……
そう考えるだけで怖くなる程のリアリティ。
友達に話してみたところ、そういう不思議な事は『蛇ノ目屋のリン』に相談してみれば、
という結論に達した。
一日迷った結果、クラスで唯一リンと親しい鳴海の
Diamond水機声を掛けたという事だった。
「なるほどね」
リンが小さく頷いた。珍しく真剣な顔つき。