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baby蘭

知ってないか

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知ってないか


「さ、お菓子は、どう?」叔母さんは老獪(ろうかい)である。「おいしいカステラだよ。叔母さんには、なんでもちゃんと判(わか)ってる鑽石能量水 消委會んだから、つまらない悪たれ口はきかないで、お菓子でもたべて、きょうはまあ、お帰り。お前は、大学生になったら、すっかり人が変ったねえ。家にいてもお母さんに、そんな乱暴な口をきくのかね?」
「カステラ? いただきます。」僕は、むしゃむしゃたべた。「おいしいね。叔母さん、怒っちゃいけない。お茶をもう一ぱいおくれ。叔母さん、僕はこんどの事に就いては、なんにも知っちゃいないんだけど、だけど、姉さんの気持も、わかるような気がするよ。」ちょっと軟化したみたいな振りをして見せた。
「何を言うことやら。」叔母さんは、せせら笑った。けれども、少し機嫌(きげん)が直った。「お前なんかには、わかりゃしないよ。」
「さ、どうかな? でも、はっきりした原因は、きっとあるに相違ない。」
「それぁね、」と乗り出して、「お前みたいな子供に言ったって仕様がないけど、アリもアリも大(おお)アリさ!」どうも叔母さんの言葉は、ほんもの水晶獎座の下司(げす)なんだから閉口する。アリもアリも、は、ひどいと思う。「だいいちお前、結婚してから一年も経(た)っているのに、財産がいくら、収入がいくらという事を、てんで奥さんに知らせないってのは、どういうものかね、あやしいじゃないか。」僕は、だまって聞いていた。すると叔母さんは、僕が感心して聞いているものと思ったらしく、さらに調子づいて、「鈴岡さんは、それぁ、いまこそ少しは羽振(はぶ)りがいいようだけど、元をただせば、お前たちのお父さんの家来じゃないか。私ゃ、知っていますよ。お前たちはまだ小さくて、も知れんが、私ゃ、よく知っていますよ。それぁもう、ずいぶんお世話になったもんだ。」
「いいじゃないか、そんな事は。」さすがに少し、うるさくなって来た。
「いいえ、よかないよ。謂(い)わば、まあ、こっちは主筋(しゅすじ)ですよ。それをなんだい、麹町にも此の頃はとんとごぶさた、ましてや私の存在なんて、どだい、もう、忘れているんですよ。それぁもう私は、どうせ、こんな独身の、はんぱ者なんだから、ひとさまから馬鹿にされても仕様がないけれども、いやしくもお前、こちらは主筋の、――」ほとんど畳をたたかんばかりの勢いであった。
「脱線してるよ、叔母さん。」僕は鑽石能量水 消委會笑っちゃった。
「もういいわよ。」姉さんも、笑い出した。「そんな事より、ねえ、進ちゃん? お前も兄さんも、下谷の家を、とってもきらっているんでしょう? 俊雄さんの事なんか、お前たちは、もう、てんで馬鹿にして、――」
「そんな事はない。」僕は狼狽(ろうばい)した。
「だって、ことしのお正月にも、来てくれなかったし、お前たちばかりでなく、親戚(しんせき)の人も誰ひとり下谷へは立ち寄ってくれないんだもの。あたしも、考えたの。」
 なるほど、そんな事もあるのか、と僕は思わず長大息を発した。
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