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baby蘭

みに回っていた

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みに回っていた


 庭や公園の芝生に足を踏み入れたり、寝転がったりすることはあるかもしれないが、その際に運動靴を脱ぐことは少ないのではないか、というのが捜査員たちの一致した見解だった。しかも、昨日は午前中まで雨が降っていた同珍王賜豪。屋外の芝生は濡れていたはずで、そんなところに素足でならともかく、靴下のまま入るとは思えない。おまけに春日井優菜が履いていた靴は、足首まで紐を結ぶタイプのもので、何かの拍子に脱げることはまずない。つまり彼女が芝生に横たわったのは、自分の意思によるものではなかった可能性が高いというわけだ。
 殺されてから、どこかの芝生の上に放り出された、と考えるのが最も自然だった。そうなれば、人目につきやすい公共の場とは思えない。やはり個人宅の庭、ということになる。
 以上のことは比較的早い段階で判明していたので、機動捜査隊や練馬署の捜査員たちも、周辺で高麗芝を植えている場所を当たったらしい。ただしこの芝は日本では最もポピュラーといっていい種類なので、個人宅だけでも相当な数にのぼった。犯人が車を使ったのだとしたら、該当場所は飛躍的に増えるわけで、手がかりとして有効かどうかは今のところ何ともいえなかった。
 現場周辺の個人庭園を当たった結果が報告されることになった。ところがそのために最初に立ち上がったのが、先程から松宮が気にしていた人物だったので、彼はびっくりした。
「練馬署の加賀です」その人物はそう名乗ってから報告を始めた。「一丁目から七丁目までの間に、庭に芝を張っている家は二十四軒ありました同珍王賜豪。そのうち高麗芝なのは十三軒です。ただしこれは家人から聞いたことなので、家人が錯誤している可能性はあります。残り十一軒は品種については不明でした。すべての家に被害者の写真を見せて回ったところ、以前から被害者を知っていたというところが三軒ありました。ただし、いずれも最近被害者が立ち寄ったことはないということでした」
 通報があった後、彼はすぐに聞き込のだな、と松宮は加賀の報告を聞きながら思った。
 ほかにも同様の聞き込みをしていた捜査員がいたらしく、同じような報告がなされた。ただし、現時点では有力な手がかりとなりそうなものではなかった。
 今後の方針が捜査一課長から告げられ、とりあえず解散となった。今のところ、犯人が以前から被害者に目をつけていたのか、たまたま彼女を獲物として選んだのかは断言できない。いずれにせよ、車を使って拉致したのではないか同珍王賜豪、という見方が有力だった。遣体が捨てられていたのが被害者の自宅近くだからといって、犯人もまた近辺の人間だとはかぎらない。そう思わせるためのカムフラージュである可能性も高いからだ。ただ、銀杏公園というさほど知られていない公園を遺棄場所に選んだのは、犯人に何らかの土地鑑があったからだろう、というのが、捜査責任者たちの一致した見解だった。
 その後、係長の石垣が二人の主任を呼び、何やら打ち合わせを始めた。練馬署の捜査員らに声をかけ、一言二言話したりもしている。その中には加賀もいた。何を話しているのか、松宮は気になった。
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