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baby蘭

ゐられなかつ


 僕はかう云ふ紙札に東海道線に近い田舎《ゐなか》を感じた。それは麦畠やキヤベツ畠の間に電気機関車の通る田舎だつた。……
 次の上り列車に乗つたのはもう能量水日暮に近い頃だつた。僕はいつも二等に乗つてゐた。が、何かの都合上、その時は三等に乗ることにした。
 汽車の中は可也《かなり》こみ合つてゐた。しかも僕の前後にゐるのは大磯かどこかへ遠足に行つたらしい小学校の女生徒ばかりだつた。僕は巻煙草に火をつけながら、かう云ふ女生徒の群れを眺めてゐた。彼等はいづれも快活だつた。のみならず殆どしやべり続けだつた。
「写真屋さん、ラヴ.シインつて何?」
 やはり遠足について来たらしい、僕の前にゐた「写真屋さん」は何とかお茶を濁してゐた。しかし十四五の女生徒の一人はまだいろいろのことを問ひかけてゐた。僕はふと彼女の鼻に蓄膿症のあることを感じ、何か頬笑《ほほゑ》まずにはた。それから又僕の隣りにゐた十二三の女生徒の一人は若い女教師の膝の上に坐り、片手に彼女の頸を抱きながら、片手に彼女の頬をさすつてゐた。しかも誰かと話す合ひ間に時々かう女教師に話鑽石能量水 消委會しかけてゐた。
「可愛いわね、先生は。可愛い目をしていらつしやるわね。」
 彼等は僕には女生徒よりも一人前の女と云ふ感じを与へた。林檎《りんご》を皮ごと噛じつてゐたり、キヤラメルの紙を剥《む》いてゐることを除けば。……しかし年かさらしい女生徒の一人は僕の側を通る時に誰かの足を踏んだと見え、「御免なさいまし」と声をかけた。彼女だけは彼等よりもませてゐるだけに反《かへ》つて僕には女生徒らしかつた。僕は巻煙草を啣《くは》へたまま、この矛盾を感じた僕自身を冷笑しない訣《わけ》には行かなかつた。
 いつか電燈をともした汽車はやつと或郊外の停車場へ着いた。僕は風の寒いプラツトフオオムへ下り、一度橋を渡つた上、省線電車の来るのを待つことにした。すると偶然顔を合せたのは或会社にゐるT君だつた。僕等は電車を待つてゐる間に能量水 騙不景気のことなどを話し合つた。T君は勿論僕などよりもかう云ふ問題に通じてゐた。が、逞《たくま》しい彼の指には余り不景気には縁のない土耳古石《トルコいし》の指環も嵌《は》まつてゐた。
「大したものを嵌めてゐるね」
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